うつ傾向のある部下をどう動かす?上司のメンタルを保つ付き合い方を精神科医に聞く
上司の立場にあるキャリア女性のみなさんの中には、日頃の部下との関係で悩んでいる人もいるのではないでしょうか。最近の若者は「メンタルが弱い」といわれているほか、何でもハラスメント扱いする、いわゆる『モンスター部下』と呼ばれるケースもあるとの噂もあります。今、そんな部下に悩んでいるのであれば、より良い付き合い方を見つけてみませんか。
今回は、精神科医の広岡清伸先生に、今ドキの部下との賢い付き合い方や、部下を元気に動かす方法、上司のメンタルがやられないためのコツなどを教えていただきました。
教えてくれたのは…精神科医の広岡清伸先生

広岡 清伸(ひろおか・きよのぶ)先生
広岡クリニック 院長
精神科専門医、指導医、精神保健指定医。広岡クリニック理事長。富山県高岡市出身、早稲田大学中退、日本大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院研修医、堀ノ内病院、関東労災病院などを経て1992年に横浜市港北区に広岡クリニックを開設。患者の目線に立って治療する独自の「肯定的体験療法」が評判を呼ぶ。今まで診察してきた患者は1万人を超える。著書に、『広岡式こころの病の治し方』(日経BP社)、『心の病になった人とその家族が最初に読む本』(アスコム)、『ごめんなさい、もうこれ以上頑張れません 生きづらい社会で傷ついた人が、再び「自分」を取り戻すまで』(アスコム)などがある。
広岡先生は、広岡クリニック理事長を務めており、これまで1万人以上の患者さんの治療にあたってきました。患者さんの目線に立って治療する独自の「肯定的体験療法」が評判を呼んでいます。
広岡先生の2026年1月に発売された著書「ごめんなさい、もうこれ以上頑張れません 生きづらい社会で傷ついた人が、再び『自分』を取り戻すまで」では、5名の患者さんが、少しずつ自分らしさを取り戻していくストーリーが綴られています。

例えば、過重労働で心が押しつぶされそうになった教師の若い女性、出世を機に人生の歯車が崩れ、うつに苦しんだ元エース営業マン、一流企業でのパワハラにより休職へ追い込まれた女性社員など、さまざまな境遇や思いの人が、どのように立ち直っていったのかを知ることができます。
もし今、あなた自身や部下、友人、家族などがメンタル不調に悩まされているなら、一読してみると、何か新しい発見があるでしょう。
メンタルの弱い部下との付き合い方

広岡先生に、まずはメンタルの弱い部下との付き合い方を教えていただきました。
「近年増えている『新型うつ病』的傾向の部下は、“他責・回避・過敏さ”を示すことが少なくありません。その背景には、かつての日本企業にあった家族的な支えの弱まりと、孤独感や存在不安の高まりがあります。その結果、自己防衛として権利意識が強くなっている側面があります」
「新型うつ病」とは、20-30代の若者に多く、社会のルールに縛られるとストレスを感じやすい傾向があるといわれる、新しいうつ病です。特徴として「何でも人のせいにする(他責)」「仕事は回避するがプライベートは楽しく過ごせる(回避)」「他人の言動に対して過敏に反応する(過敏)」などがあるといわれています。
このような部下を持った場合、どうすれば良いのでしょうか。
「こうした部下への対応で重要なのは、『成果が出せない=価値がない』と扱わないことです。まずは『一人の人間として大切にしている』という姿勢を、日常の言葉と態度で示し、安心できる関係性を築きましょう。その土台があってこそ、指導の言葉も受け取られるようになります」
うつ傾向にある部下をパワフルに動かす方法

もしうつ傾向にあると感じる部下がいるなら、上司としてはパワフルに動かしたいものです。どうすれば良いのでしょうか。
「うつ傾向のある部下には、大きく2つのタイプが見られます。ひとつは、真面目で責任感が強く、限界を超えても頑張り続けてしまう『疲弊型』。もうひとつは、対人過敏や不安が強く、ストレスに心身が反応しやすい『過敏型』です。
前者には『ここまでよく頑張ってくれている』と労(ねぎら)い、まずはしっかり休ませることが重要です。後者には、何が負担になっているかを丁寧に聞き、業務量や配置の調整を検討しましょう。
共通する鍵となるのは、叱咤激励ではなく『存在を認める言葉』です。たとえば、『○○さんがいてくれると安心する』『一緒に仕事ができて嬉しい』など。こうした安心感が、主体的な行動を引き出します」
まずはタイプを見極めて、「存在を認める言葉」をかけてあげましょう。
上司自身がメンタルをやられないためのコツ

ところで、部下との関係であなた自身が深く悩んでいませんか? どんな言葉をかけていいかわからず、疲弊してしまっているかもしれません。メンタルをやられないためのコツを広岡先生に教えていただきました。
「部下に気を使いすぎて疲れている上司の方にお伝えしたいのは、『あなた自身にも、存在そのものに価値がある』という視点を持つことです。パワハラを恐れるあまり、必要な指導まで控える必要はありません。大切なのは、指導の前後に『あなたを大切に思っている』という姿勢を言葉と態度で示すことです。また短時間で気持ちを整える工夫も有効です。例えば、30秒だけ窓の外を見る、深呼吸をする、肩を回す、『大丈夫』と心の中でつぶやく。こうした小さな切り替え行動が、脳の過緊張を和らげます。自分を守ることが、結果的にチームを守ることにつながります。ぜひ実践してみてください」
部下との関わり方に悩んでいる人は、大きなヒントになりそうですね。ぜひ日頃の部下とのコミュニケーションに取り入れてみてください。
Photo by Daniel Dan
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