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2030年、意思決定層に「30%」の女性を。Toget-HER 国際女性デー特別イベント『女性リーダーズ・サミット』参加レポート

2026年3月10日、国際女性デー特別イベント「Toget-HER 女性リーダーズ・サミット」が、Deloitte Tohmatsu Innovation Park(東京都千代田区)で開催されました。

本イベントは、一般社団法人Toget-HERが主催し、女性活躍支援に取り組む団体・企業・自治体・メディア関係者らが一堂に会したものです。会場には、女性支援団体や企業、自治体関係者、ジャーナリストなど多様な立場の参加者が集まり、「2030年までに女性の意思決定層を30%にする」という目標に向けて、いま何をすべきかを考える場となりました。

今回のサミットは、単なる啓発イベントにとどまらず、それぞれの現場で活動を続けてきた方々が課題を持ち寄り議論する、強い熱量を感じる内容でした。当日の様子を一部ご紹介したいと思います。

50以上の団体・企業をつなぐ新たな一歩

Toget-HERは今後、50以上の女性活躍支援団体のデータベースを含むプラットフォームを構築していく予定。女性活躍支援に取り組む組織は国内外に数多く存在する一方で、それぞれの活動が見えにくく、横のつながりも十分とは言えません。今回のプラットフォームは、そうした団体・企業の活動を可視化し、連携やマッチングを促進することを目的としています。

「女性の意思決定層30%」という目標は以前から掲げられてきましたが、現実には管理職に占める女性の割合は依然として高いとは言えません。そうしたなかで、単独の組織だけではなく、領域を超えてつながる仕組みをつくること自体が、今回のイベントの大きな目的でありメッセージでした。

地方、中小企業、ヘルスケア、メディア、金融。課題は違っても、根っこはつながっている

イベント前半では、女性活躍支援に取り組む多様な団体・企業によるアクション宣言が行われました。印象的だったのは、それぞれが扱っているテーマは異なっていても、「意思決定の場に女性が少ないこと」が多くの社会課題に共通していたことです。

地方の中小企業における女性活躍を推進する立場からは、家業承継や地域金融の現場にいまだ根強く残る無意識のバイアスについて言及も。女性の起業支援はあっても、女性が事業承継や意思決定を担う前提が十分に共有されていない現実があるという指摘は、地域経済の構造的な課題を映し出していました。

若手女性のキャリア形成を支援する団体からは、妊活や卵子凍結、働き方の選択など、将来の意思決定層を育てるうえで若い世代が直面している悩みや不安が共有されました。「女性が意思決定をする場にいることが当たり前の社会にしたい」という言葉は、非常にシンプルでありながら、このイベント全体を象徴する強いメッセージを感じました。

また、地方女性のIT・AI人材育成に取り組む立場からは、地方の女性人材とデジタル分野の人材不足を結びつける形で、女性の高度専門人材化を進めていく必要性が語られました。

ヘルスケア分野では、子宮頸がん検診やワクチン接種の大切さを訴える声に加え、女性特有の健康課題が社会のなかで見えにくいまま放置されてきたことへの問題提起も。女性のキャリアやリーダーシップの話をするとき、健康課題が“個人の問題”として片づけられがちですが、実際には就業継続や意思決定の場への参画と深く結びついていることを改めて考えさせられます。

さらに、メディア関係者からは、女性の働く上での壁や生きづらさを報じ続けてきた立場から、情報発信の重要性が語られました。社会の規範や空気は一朝一夕には変わりませんが、言葉にし、報じ、可視化し続けることが変化において重要であるという発言が印象に残っています。

金融やスタートアップ領域からは、女性起業家への資金供給の少なさや、投資する側の意思決定層にも女性が少ない現状の指摘がありました。女性の意思決定層を増やすためには、雇用や昇進の話だけでなく、お金がどこに流れるかという視点も欠かせません。

東京都からも後押し。「動けば変わる」というメッセージ

当日は東京都の松本明子副知事も登壇し、東京都が進める女性活躍推進施策について紹介がありました。雇用・就業分野における女性活躍推進条例の制定や、キャリア相談、女子中高生向けのオフィスツアー、スタートアップ支援、健康課題への支援など、多面的な施策が展開されているそうです。

「動けば変わる、つながれば力になる」というメッセージを強調されており、理想を語るだけでなく、具体的な制度や場をつくり続けることの重要性が、行政の視点からも語られました。

パネルディスカッションで見えた“30%”実現の難しさ

後半のパネルディスカッションでは、「2030年までに女性の意思決定層30%を実現するには何が必要か」が議論されました。登壇者は、投資家、ベンチャーキャピタル、政治、ジャーナリズム、企業経営の立場から参加し、分野横断で意見を交わしました。

議論の出発点として示されたのは、「女性役員の半数以上が2030年までの30%達成は難しいと見ている」という調査結果。なぜ難しいのか。その理由として挙げられたのが、伝統的な性別役割分業意識、ワークライフバランスの問題、配属や育成の偏り、評価基準の固定化などです。

企業内の女性活躍を阻む要因として、「候補者がいないのではなく、候補者が育つ機会が偏ってきたのではないか」という点が指摘されました。配属、育成、評価、働き方が連動した結果として、女性が意思決定層に上がりにくい構造がつくられているのではないかという問題提起には、大きくうなずかされました。

また、政治分野からは、ビジネスと政治は切り離せないという指摘も。ケア責任を個人や家庭に押しつけるのではなく、法律や制度を通じて社会全体で支える仕組みに変えていく必要があること、そして企業の意思決定層の偏りと政治の代表性の低さは相互に影響し合っていることが語られました。

投資家の立場からは、取締役会の多様性基準を設ける動きが広がっている一方で、社外取締役として女性を迎えた後の環境整備や、実際に意見が尊重される状態までつくれているかはまだ道半ばであるという指摘もありました。

ジャーナリズムの立場からは、社会規範を変えるには意識変容だけでは足りず、まず行動を変えるための制度やルールが必要だという考えが示されました。

「つながること」そのものが、この場の価値

このイベント全体を通して感じたのは、課題の大きさと同時に、「一つの組織だけでは変えられないことを、横断的につながることで動かしていこう」という意志の強さです。

女性活躍という言葉は広く使われるようになりましたが、その中身は領域ごとにかなり異なります。地方の課題もあれば、スタートアップの課題もあり、健康課題、政治、メディア、金融の論点もある。それでも、意思決定層の偏りを変えたいという思いの根っこは共通していました。

Toget-HERが新たなステージとして掲げる「つながりを可視化し、連携を加速させる」という構想は、まさに今必要とされている動きなのかもしれません。

おわりに

「2030年までに女性の意思決定層30%」という目標まで、残された時間は多くありません。ただ、今回のイベントで見えたのは、課題が山積しているという現実だけではなく、すでに現場で動いている人たちがいて、その輪を広げようとしていることでした。

制度を変えること、場をつくること、可視化すること、声を上げ続けること。どれか一つではなく、それらを同時に進めていく必要性を改めて感じさせられました。

今回の「女性リーダーズ・サミット」は、そのための出発点であると同時に、分断されがちな取り組みをつなぎ直すための大切な場だったように感じました。今後このネットワークがどのように広がり、具体的なアクションにつながっていくのか、引き続き注目したいと思います。

【一般社団法人Toget-HER概要】
設立:2025年2月
住所:東京都千代田区神田和泉町1番地6-16 ヤマトビル405
代表理事:及川美紀
事業内容:社会を変革するための提言と実行、女性リーダーになるために必要な知識やスキルを学ぶ場の提供、女性活躍支援コミュニティの運用
URL:https://toget-her.amebaownd.com/

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